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豆知識 09 西洋音楽史の概観

豆知識 09 西洋音楽史の概観

西洋音楽の作曲法・音楽理論を考える時、その歴史的視点を欠くことは出来ません。
このブログの各カテゴリーを理解していただく目的で、西洋音楽史を概観してみます。

西洋音楽史をどこから始めるかについては色々な問題を含んでいます。
音楽の歴史…であれば先史時代まで遡らなければならないでしょう。

多くの西洋音楽史の文献は、古代ギリシャから説明を始めています。
音楽用語やオペラの誕生を考えると、古代ギリシャの音楽をはずすことはできないのですが、音楽そのものは、直接今日の西洋音楽に結びついているとは言えません。

西洋音楽のもつ最も大きな特徴は、他の音楽にはないポリフォニーをもっているということです。
そこで、ここではポリフォニーの誕生から、年表形式で西洋音楽史の概観を始めたいと思います。(概観ですので詳しい説明はしません。詳細は音楽史の書物やサイト、音楽辞典などを参照してください。)
関連サイト→


書かれている年号はあくまでも目安です。
6世紀末や7世紀初であれば600、7世紀中頃であれば650のように表記してあります。



850 ポリフォニーの誕生
キリスト教で歌われるグレゴリオ聖歌に、完全4度または5度の音程を平行して歌う第2の声部が登場しました。これは平行オルガヌムといわれていますが、9世紀中頃に書かれた作者不詳の「ムジカ・エンキリアディス(音楽提要)」で初めて紹介されています。
pl_organum.jpg

演奏→


1000 記譜法の開発
オルガヌムは次第に声部の独立性を獲得していきますが、その過程で正確に音程を記譜する必要が起こってきます。
線を使って音程を正確に記譜する方法の初出は、グィド・ダレッツォGuido d'Arezzoの「アンティフォナリウム序文Prologus in Antiphonarium」と言われています。
グィドはソルミゼーション(音をド・レ・ミ…のように覚えさせる教育法)も考案しました。
参考サイト1→
参考サイト2→


1150 初期ポリフォニーの完成
記譜法の誕生によってオルガヌムはより緻密になり、12世紀中ごろには多くの作曲家によって作られるようになりました。
その代表はパリのレオニヌスとその弟子のペロティヌスで、ノートルダム聖堂の作曲家であったために、ノートルダム楽派と呼ばれています。
ノートルダム楽派のオルガヌムの特徴は、3分割(拍子)のリズム(リズム定型)にあります。
当時の教会では三位一体説に基づき、3分割のリズムが完全なものと見なされ、人間にとってより自然な2分割のリズムは不完全なものと考えられ、認められていませんでした。
もう一つの特徴は、協和音程にあります。
協和音程は完全協和音程のことで、不完全協和音程が認められていなかったため、2度・7度と3度6度が区別されず、ところどころに不協和音程が聞こえてきます。
ars_antiqua.jpg

演奏→


1300 アルス・ノヴァ
より自然な2分割のリズムが導入され、記譜法が改められ、不完全協和音程と不協和音程の区別がつくようになって来た時代は、フィリップ・ド・ヴィトリPhillipe de Vitryによって書かれた理論書「アルス・ノヴァars nova(新技法)」の名前で呼ばれ、これ以来、ノートルダム楽派の音楽はアルス・アンティクァ(旧技法)と呼ばれるようになりました。
ars_nova.jpg

演奏→


1450 ルネッサンス
不完全協和音程の承認は三和音の確立を促しました。
この結果西洋音楽は、今日考えられている「音楽の三要素(リズム・メロディ・ハーモニー)」の条件の全てを満たすことになり、私たちの耳に違和感なく聞こえる音楽になりました。
renaissance.jpg

演奏→


1600 ヌオヴェ・ムジケ
グレゴリオ聖歌以来の教会旋法は、ルネッサンスの時代にムジカ・フィクタ(半音変化)によって長音階・短音階に集約されていきます。
その一方、他の芸術が行ってきたルネッサンスの合言葉「古典復興」を音楽だけは成し遂げていませんでした。
人文学者・詩人・音楽家などの仲間たち(カメラータ)はギリシャ音楽劇の復興にとりかかり、その結果新しい通奏低音という様式を生み出しました。
これは、旋律とバス、そして即興で演奏される内声の和音という構造で、古典・ロマン派のホモフォニー様式の先駆けとなるものでした。
カッチーニGulio Cacciniは、この新しい様式を取り入れた歌曲集を作り「ヌオヴェ・ムジケnuove musiche(新音楽)」と名づけ、この時代の音楽もそう呼ばれました。
baroque.jpg

演奏→


ヌオヴェ・ムジケに始まるバロック時代は、中世以来のポリフォニー様式を極限まで追い求めるとともに、次の時代の準備を始めたということで、過渡期の時代と呼ばれています。



1750 古典・ロマン
通奏低音の、即興で演奏されていた内声が記譜されるようになると、ホモフォニー様式が完成します。
長・短音階による調性ホモフォニー様式は、古典派・ロマン派の作曲家達によって極限まで追求され、ワグナーの「トリスタン和音」(豆知識06)に代表されるように、その限界を向かえ、新しい様式の音楽が追求されていきます。

この時代の音楽はよく知られているので、譜例は省略します。



1900 ノイエ・ムジーク
シェーンベルクに代表されるような、20世紀初頭の無調様式を目指す音楽は、ドイツ語でノイエ・ムジークNeue Musik(新音楽)と呼ばれていました。


以上、300年毎に誕生する新しい技術(新技法・新音楽)が150年で完成するというこの図式は、W.アペルがハーヴァード音楽辞典の第2版で提唱したものです。
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Author:賀田麗太郎
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都内の音楽大学で作曲と音楽理論を教えています。
大学の講義で使用してきたノートを整理していますが、少しでも多くの方のお役に立てばと思い、その一部を公開することにしました。
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