豆知識 01 変化記号
変化記号の読み方とその由来の話です。

この一覧表のうち、日本語と英語はよく使われていますが、イタリア語とフランス語は音大生でも知らない生徒が多いので驚きです。
フランスの音楽用語は、日本ではあまり使われないので納得できますが、大半の音楽用語がイタリア語で、階名(ドレミファソラシ)もイタリア語を常用しているのに、変化記号だけは英語が常用される…不思議ですね。
ドのシャープのような読み方が小学校以来使われていますが、ド→イタリア語/の→日本語/シャープ→英語…これは用語法の混乱と言っていいのではないでしょうか。
音楽の勉強を専門的に始めると、ドイツ音名(ツェー・デー・エー・エフ・ゲー・アー・ハー)をすぐに覚えさせられますが、にもかかわらず変化記号の名称をドイツ語で言える人はほとんどいません。
とはいえ、ドイツ語の変化記号が知られていないのは、ドのシャープはツェー・クロイツではなくツィスになり、音楽の現場で使う必要がないからで、これは理解できます。
イタリア語の変化記号の名称には、とても興味深い由来があります(フランス語は同じ語源です)。
ドレミファソラシのように7つの音を用いる音階septatonicには、東洋系のドレミソラの5つの音を用いる音階pentatonicにはない、ファとシという不快な音程が含まれています。
この2つの音は全音を3つ並べることによってできるので、三全音tritonusとよばれ、悪魔の音程として忌み嫌われていました。
それで、グレゴリオ聖歌を歌うときにファソラシのようなメロディが出てくると、シの音を半音下げて歌うのが通例になっていました。
これは、作られた音musica ficta、または嘘の音musica falsaとよばれ、正確な決まりはありませんが、多くの人たちが同じように歌っていました。
線を使った記譜法staff notationが普及してくると、この半音の変化も記譜する必要が起こってきます。
試行錯誤の結果、階名のシは、音名ではbになりますが、このbの文字を異なるデザインで表示することで二種類の高さのシを表記することにしました。

本来のシは硬い音に感じられたので四角いシを用い、半音低いシは柔らかく感じられたので丸いシを用いました。
この四角いシのデザインが変更されて今日の本位記号になり、そのまま四角いシ=bequadroとよばれるようになりました。
丸いシのデザインは大きな変更はありませんでしたが、名称は柔らかいシ=bemolleとよばれるようになりました。
ピアノの歴史 01 で紹介した鍵付きモノコードの鍵盤には、この四角いシと丸いシが書かれた鍵盤があります(写真の載っているサイトを見つけることができませんでした)。
ちなみに、ドイツ音名cdefgah(ツェー・デー・エー・エフ・ゲー・アー・ハー)のhはなぜb(ベー)ではないのかという疑問をもたれる方が多いと思います。
これはドイツ人の合理精神によるもので、シの音のために四角いシの文字を作るのは無駄なこと、要は区別ができればよいのだからbに近いアルファベットの文字hを当てたのが、その理由でした。
ですから、半音下がったシはもちろんbを用います。
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