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ピアノの歴史 05

05 ダブルエスケープメント機構

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<エラールの改革>

 エラール Sebastien Erard は、1811年、59才のときに、今日のペダル・ハープの原型となるダブル・アクションを完成させた、フランスの天才的な楽器職人で、クラヴサンの製造技術も短期間で修得し、若干20才で高い評価をうけ、普及し始めたばかりのピアノ製造にも手を広げました。

セバスチャン・エラールの肖像

エラールのダブルアクション・ハープ


 ツンペのシングル・アクションは、イギリス国内ばかりではなく、フランスでも評判を得て、その改良型、イギリス式アクションもフランスで受入れられました。当時、ピアノの演奏技術が飛躍的な勢いで向上したため、多くのピアニストが従来のピアノのレペティション(同音反復における鍵盤の反応)に不満をもっていました。エラールはピアニストのすばやい指の動きに忠実に反応するピアノを作ろうと、1808年にイギリス式アクションの最初の改良を始め、1821年にダブル・エスケープメント機構を完成させました。リストは、13才の時にエラールのピアノに出会い、以後このピアノの虜になった。「ラ・カンパネラ」は、ダブル・エスケープメントなくしては生まれない作品です。

リストとエラール

エラールのアクション

 19世紀の中頃から、徐々に各メーカーもエラールの方式に移行し始めました。1859年にはスタインウェイもダブル・エスケープメントを採用し、20世紀の始めにはグランド・ピアノのほぼ全てがこの方式になりました。(シュトライヒャーだけはウィーン式アクションの伝統を守るために、イギリス式との折衷方式アングロ・ジャーマン・アクションを20世紀中頃まで作っています。)

現代のグランドピアノ・アクションの動き


<その後の改良>

 ピアノは大量のスチール弦を用いるために、木製フレームでは弦の張力に十分対応できず、18世紀のピアノの多くはそのケースが歪んでいる。このため、金属の棒 metal tension bar で補強することが、1799年に Joseph Smith によって考えられ、以後、各メーカーもこれを採用するようになり、ブロードウッドはさらに金属の板 metal plate の補強も行うようになって(1820s)、1音の弦の本数を3本にふやし、ハンマーを大きくし、弦を太くすることができるようになりました。

 モーツァルトの強弱記号が p から f の範囲であるのに対し、ベートーヴェンが pp から ff にその範囲を広げることができたのは、こうした楽器の改良のためということがでます。
 より豊かな音量を追及して、ハンマーと弦が徐々に大きく太くなっていくと、従来の鹿皮をまいたハンマーでは音色が固く耳障りになり、羊毛やゴムをまくなどの試行錯誤の末、かつてプレイエルの工房で働いていたパプ Henri Pape によってフェルト巻きハンマーが1826年に開発されました。また、パプは増大する弦の張力を分散させる目的で、交差弦方式の張弦法 over stringing も考案しています(1828)が、音色に対する不信感から、実際に多くのメーカーがこれを採用するようになるのは19世紀の後半になってからでした。

 リストは大人気のピアニストであったため、それまでサロンで行っていた演奏を、より多くの人に聞かせられるようにと、コンサート・ホールで行うようになりました。このため、ピアノの音量をさらに増大させる改良が進み、テンション・バーもその本数を増していきます。そして、金属加工技術の発達とともに、1843年にチカリングが総鋳鉄フレームを考案すると、19世紀の終り頃にはほぼ今日のピアノと同様の楽器が作られるようになりました。1874年にスタインウェイがソステヌート・ペダルを考案して以来、ピアノに大きな変化は見られません。

 20世紀の初頭、プロコフィエフやバルトーク等によって、ピアノを打楽器のように扱う奏法が考えられたのも、頑丈で大音響を出せる楽器が作られるようになったからに他なりません。

弦とハンマーの変遷とフレーム

木製フレームのピアノ
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都内の音楽大学で作曲と音楽理論を教えています。
大学の講義で使用してきたノートを整理していますが、少しでも多くの方のお役に立てばと思い、その一部を公開することにしました。
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